接木簡易な養生床での管理

以前は、接木後の3日間は完全遮光で湿度100%が基本でした。
天候や苗質によっては腐敗や徒長する事ありましたが、接木作業の機械化や養生の自動化がメーカーにより研究される中で普及センター等から資料を入手し養生技術の改良を重ねました。

  • 初期から出来るだけ多く光に当てましょう。
  • 軽くしおれる程度の湿度で管理すると傷口の融合が早い。
  • 養生床内に微風があると更に良い。
  • 水や温度を控えた硬く締まった苗で接木する。

改良後は歩留まりも上がり、腐敗と徒長が減り養生期間が短くなりました。
幼苗接木の養生も基本は一緒です。

接木作業後しばらくの間、高温高湿で管理します。
人間が手術のあとICU(集中治療室)で見守られるように、接木と言う大手術の後なので手厚い管理が必要になります。

養生床つくり

まず、養生床を作成します。
木板などでベッドになる部分を囲います。
地面をならしてから地下の冷気を遮断する為に稲わら、籾殻、古ビニール、発泡スチロール等で断熱層をつくり、 その上に温床線を並べ、砂や床土で押さえます。
温度調節のためにサーモスタットを設置してください。
感電や漏電の危険があるので、結線と絶縁はキッチリやりましょう。
養生床(活着するまで入れておく温床)の地温は20℃以上欲しいので、発芽床と同程度の発熱量が得られる農電ケーブルを張ってください。
発熱量は、温床線 の密度で調整します。

ベッドが完成したら床面を均平にして厚手の 不織布(ラブシートブラック等)を敷き、上にトンネルを設置します。 トンネル

湿度の調整と水滴の落下を避けるために、厚手の白い不織布(マリエース等)を張り、その上に農POビニールフィルムを左右から張り、上面で重ねて密閉します。更に遮光資材を乗せます。
遮光資材は、黒寒冷紗のほかワラで編んだコモや遮熱遮光できるアルミ蒸着系の資材があると便利です。
養生床の上部に日陰を作るカーテンを設置すると温度管理が楽にできます。

前日から養生床に敷いた不織布にタップリ散水して床内の温度と湿度を十分に上げておきます。
日中は地温で25~28℃、気温で25~35℃。そして初期の湿度は100%近くが必要なので温湿度計などで確認しましょう。
養生床内に空中温床線を設置して気温を上げる事も可能です。

養生管理のしかた

気温が高い方が活着が早く簡易な設備では、気温は天候に大きく左右されるので可能なら2~3日連続した晴天が予想される時に接木作業を行いましょう。

接木作業当日を0日とします。
接木完了後は速やかに養生床に並べて葉に霧吹き(シリンジ)を行い"しおれ"を防ぎます。
当日(0日)と翌日(1日目)は、完全密閉で湿度は90~100%、地温は昼夜25~28℃、気温25~35℃夜温18℃前後を目安にします。
晴天時は、遮光にアルミ系のシートや黒寒冷紗を使い、しおれない温度湿度で管理します。
曇天や雨天の場合は、不織布越しの光を入れます。

翌日の養生1日目からは、朝晩の弱光を入れます。
もしも曇天ならば日中もアルミ資材や寒冷紗を外し、不織布越しに光を入れます。
気温が上がり、しおれるなら再び遮光し霧吹きをして湿度を上げを回復させます。 接木後

2日目の朝から農POビニールの上面を10~15cmくらい開け湿度を下げます。
日中は軽くしおれる程度の湿度で管理し、夕方4時前後にビニールを閉めて霧吹きで、しおれを回復させます。
遮光の程度は天候と気温、しおれの具合をみながら調整します。
まだ環境変化に弱いので無理せず、しおれの程度が大きくなったと感じたら完全遮光とシリンジで回復させましょう。

4日目から昼間はビニールの開度を上げて換気量を増やします。同時に遮光率を落とし、アルミ系遮熱資材を止めて白い不織布と黒寒冷紗を使って養生します。
晴天の昼間で高温になる時は、換気量を増やしてトンネル内が35℃以上にならないよう注意します。

日中

萎凋(しおれ)が激しくなり湿度を保ちながら、気温を下げたい場合は、床内に霧吹きで湿度を補うと同時に、コモや寒冷紗をかけたトンネルの上から散水し気化熱を利用して冷やします。

1回の散水で30分ほど冷却効果は続くので様子をみながら管理してください。
4日目ころから徐々に地温気温を下げて行きます。
夜間の地温設定は20℃前後に下げます。
夕方、苗がシャンとしてきたら夜間の換気も始めましょう。

接木後6日目の朝、被覆を全部開放して上から軽く水をかけます。
養生初期に植物体に水をかけると腐敗の可能性があるので注意してください。
6日目以降は弱い遮光と散水で可能な限り開放した管理で順化させ徐々に接木前の管理に移行しましょう。
活着の進行は個体差があるので、しおれが大きい苗は取り出して別に管理します。
10日目までに日中も全開放するのが目安です。